ムウと貴鬼

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弟子に、と託されたその子供を抱き上げて、ムウは館の中へテレポーティションする。
子供は大きな目を見開いて、一瞬の景色の変化に心底驚いたようだった。
そんな子供の様子を無表情に観察しながら、ムウは早くも困りきっていた。長らくの隠遁生活で他人との接触に慣れないムウは、師匠としてかけるべき最初の言葉が見つからない。まして相手が、このように年端も行かない幼子では。
腕の中の温かさにもとまどう。人に触れたのさえ久しぶりだった。

無表情で途方にくれていると、キョロキョロと忙しく辺りを見回していた子供と目が合った。抱いたままの形で、ムウは硬直する。努力して頬を持ち上げ、なんとか笑顔を作ってみたが、自分でも情けなくなるほど、顔がこわばっているのを感じた。
子供はしばらく不思議そうにムウの顔を覗き込んでいたが、ふとその小さな手を伸ばしてきた。存在を確かめるように、ムウの顔をぺたぺたと触る。
不思議そうな顔のままの子供に好きなようにさせながら、ムウの方こそ不思議な気持ちだった。

子供が触れた箇所から、あたたかい何かがじんわりと広がって、自分の外郭を形作っていく。そんな感じがする。
ムウは久しぶりに、自分の存在をはっきりと意識した。

「ねえ」

ムウの顔に触れたまま、子供が声を出す。ムウはもう慌てなかった。

忘れていた感覚をゆっくりと思い出していくのを感じる。
話し方、笑い方。
何かそういったとても基本的なこと。

「いまの、どうやったの?」

舌足らずな口調が可愛らしい。ムウは、子供を目線の高さに抱き上げて、今度こそ自然に、微笑んだ。

「…これからあなたにも覚えてもらいますよ。でないと、この家は出ることも入ることもできないんですからね」

分かっているのかいないのか、子供はムウにつられてにっこり笑う。
草原の太陽みたいだ、とムウは思う。

まぶしい。うれしい。


ちっとも気付いていなかったけれど

ひとりはとてもさびしかった


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3月27日 牡羊座のムウ 誕生
ムウ様14歳か15歳…の、つもり。
計算するとムウ様は7歳からジャミールで一人暮らしなわけで、貴鬼と二人で暮らすようになったときはうれしかったんじゃないかなーと思って、描いてみました。貴鬼にも誰にも、口に出しては言わないでしょうけどね。
あと駄文でムウ様に貴鬼のことを「あなた」と呼ばせてますが、数年後の原作ではムウ様は貴鬼のことを「おまえ」と呼びます。「貴鬼、またおまえの悪さが過ぎましたね」って。この辺にムウ様のさりげない愛情の成長ぶりを感じていただければ(笑)!

何はともあれ、羊の皆様、お誕生日おめでとうございます!
シオン様描けませんでしたけど、おめでとうございます!(言っとかないと呪われそうだ)

2004.3.24. by.うー
主催のメモリさま、素敵な企画をありがとうございましたv



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