■ふたり■ −ゆきのはらを、見にいきませんか。 午後の執務室にひょこりと顔を出した泰麒が、遠慮がちに私を誘った。 珍しい。 普段から滅多に「ねだる」ということがない。 この部屋に姿を見せるのも久しぶりだ。理解らないことの多い自分は、かえって政務の邪魔になるとでも思い込んでいるのだろう。 「お、おしごと中にごめんなさい…ボクったら」 「いや、今日はもう終わりだ。ちょうど良いところへ来たな。久しぶりにお前と遠出でも、と考えていた」 うつむきかけた顔が、さっと私を見上げる。 「あの、じゃあ…」 「暖かい褞袍を用意してもらって、趨虞の所で待っていなさい」 「はい!」 黒い瞳が光をまとって煌いた。 泰麒がふんわりと笑むだけで、凍てついた空気も春めく気がする。 遠ざかる小さな足音をききながら、そんなことを思った。 ◇ ◇ ◇ 朝議の後に、正頼から耳打ちされていた。 「積もった雪に直に触れてみたいと」 「泰麒が?」 「蓬莱では、あまり雪の降らない辺りでお育ちになられたとか。腰まで雪に埋もれたご経験もないそうです」 雪に埋まる? 冬の戴では日常茶飯事だ。 「深い雪など民にも兵士にも難儀なだけで…」 「台輔がそれをご実感なさるには良い機会ですね」 「……なるほど」 あれは聡い子だ。雪と戯れるうちに何かを感じ取るだろう。 「藍州に程近いところに小さな丘が。街道からは少し外れておりまして、この時期は人通りもなく丁度よろしいかと。台輔には『主上なら良い所をご存知のはずです』と申し上げておきました」 さらりと書きつけられた地図を手渡される。 「用意がいいな」 「ちなみに、主上が台輔のお願いに弱いということもお伝えしましたので」 悪びれた様子もなく平然と言ってのける。 私は思わず苦笑し 「そうか。可愛らしいお誘いがあるかもしれないな」 言いながら、それはあるまいと思っていたのだが……予想外になんとも嬉しいこととなった。 |
バレンタイン企画のイラストに、土居さんがSSを作って下さいました! どうです、この泰麒の甘えんぼぶり、驍宗様の甘やかしぶり!! やはりこの主従の会話は、心にうるおいを与えてくれますねvv 正頼のサポートぶりもオイシイです! 土居さん、ホワイトデーの倍返しv本当にありがとうございましたvv (03/3/15) |
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